甦る紅き翼
一見、普通のレギオス・ゼータの当時品に見えますが……
倉庫を発掘して発見された可変玩具、学研1/35レギオス・ゼータ。「機甲創世記モスピーダ」の当時品、フラッグシップ的存在の玩具でした。しかしうちのゼータは左翼の中央からヒンジの部分で折れており、翼の半分が紛失していました。
レギオスは非常に好きだったので、壊れたときには結構なショックでした。何とか直そうと思ったのですが、変形するし力のかかる部品だしで、当時の技量で修繕は不可能でした。割と絶望した記憶があります。
しかし今なら……?
というわけで、壊れた左翼と一緒に、まだちゃんとしている右翼も、金属線を抜いて本体から外します。これを参考に……
デジタルノギスでサイズを測り、LightWaveで3DCGを設計。複雑な部品ではないので、全体の図面自体は簡単です。むしろ変形時のクリアランスとテンションの調整が0.1mm単位で必要なので、ヒンジの位置や金属線を通す場所などに神経を使います。これを3Dプリンタで出力しますが、材質的にはある程度のテンションに耐えなけばならないので、弾性があるお高めのいいレジン(今回はRESIONE 3Dプリンターレジン K absというやつ)を使いました。
出力してみたもので仮組(黒い翼パーツ)。おお?なかなかバランスいいぞ?全体像と、本体とのヒンジの接合はばっちりです。
ただ実際に中に金属線を通してみると、翼を広げた時、少し緩い(水平状態から少し垂れてくる)ような手応えでした。これは当時品もそうで、それと同じサイズで出力したから当たり前なんですが。
そこで0.1mmほど穴の位置を微調整して、少しきつめにしました。
また3Dプリントでは一般的に、左右対称のものであれば、どっちか作ってそれを反転コピーすれば大丈夫です。今ほとんど3DCADで設計しますからね。しかしこの当時品は40年近く前の物のため、おそらくですが原型は手作業で金型を作成したと思われます。そのため左右で僅かですが差があり、同じ翼のヒンジを反転コピーしても、右側はちょうどいいけど左側は緩い、というようなことがありました。ですので、左右別々に微調整しています。
今ならこんなことPCで簡単ですが、当時の原型師さんはこれ、みんな手作業でやってたんでしょうね……気が遠くなるわ……。
そうやって調整・再出力したものを、磨いて塗装します。玩具のレギオスの翼は真っ白ではないので(ただの経年変色かもしれませんが)、ホワイトに僅かのオレンジと黄色を調合、翼の色を調整しました。
中に1.5mm真鍮線を入れ、ヒンジの可動と変形のチェック。問題なくいけそうです。さらに当時品の翼からシールをはがし、プリント品のだいたい同じ場所に再貼り付けします。
これを本体にセットし、慎重に金属線を挿入すると……
ほら見てバッチリ!
サイズはデジタルで計ったんだから、合うのはまあ当たり前です。しかし翼の色が本体のほかの部分と比べて全く遜色ないのは、ちょっと自慢しても良いよね!プラモ作り続けた経験はちゃんと生きてるよ!
なお左の翼にはシール未添付です。なんせ元の翼が紛失してるからねぇw
右の翼のそれをコピーして、シール台紙に印刷しようとしたのですが、うちのインクジェットプリンタは壊れたままだったのを思い出しました。3Dには金かけるけど、2Dはおざなりなのな!>私
なお映像、そして例えば千値練製のレギオスは、翼の大部分が本体と同じ色で塗られています。こちらも映像のように翼を赤く塗ろうかとも思ったのですが、そうすると本体のほかの部分も赤く塗らなければならない場所が多すぎるので、今回は「当時品の再生」にとどめました。
そして翼が直ると、ちょっと欲も出てきます。レギオスは、アーモファイター形態ではビームキャノンを翼下に懸架する設定でしたが、当時品ではそれは不可能で、ソルジャーとダイバーの時に手に持たせることしかできませんでした。ただでさえ翼を水平に保つのが大変なのに、そこに銃を懸架したら形態の保持が大変なので、諦めたのかもしれません。
しかしやっぱり、どこかにビームキャノンを搭載したいものです。飛行時に武器が余剰パーツって、納得いかないですからね。
そこで新たに3Dプリンタで、ビームキャノンのグリップを保持して機体上部(ソルジャーの腕)のねじ穴に差し込んでおけるホルダーを作成しました。これなら変形後も、腕のホルダーから銃部分を抜くだけなので、運用としても便利そうです。
何?翼に懸架しないと地上からの攻撃に対応できない?
当時品は最初から付けられないんだから、どっちにしても地上攻撃は無理だ!諦めろ!
変形させてみます。まずは翼を出したまま脚部を展開。
続いて腕を出した、アーモダイバー形態。バルキリーはともかく、レギオスはこの形態では翼を畳んでしまうので、あんまり中間形態の意味がない気がするけど……。
もちろんアーモソルジャー形態にも、問題なく変形できました。でもやっぱ、背中の片方だけマークがないと目立ちますねw
しょうがない、インクジェットプリンタ修理してもらうか……
また先ほどの銃を保持するホルダーは、左腕の内側にあり、装着したままでも通常運用時はまったく邪魔になりません。
そうやって復活となった本体を動かして遊ぶと、達成感の塊!
千値練製の現代品なども素晴らしく良くできていますが、やっぱりこう「何も考えずに遊べる玩具」ってのは、それだけで気分が高揚します。
個人的に、当時玩具のレギオスの変形システムはバルキリーよりも好きでした。なんか変形過程が「おしゃれさん」な感じに思えたんですよ。まあ壊れやすい部品もありますが……特に翼はね。うちにはエータのジャンク品もあるのですが、そっちも両方の翼が折れてますし。
その最大の弱点も、個人で何とか直せる時代が来たかと思うと、今更ながら感動します。当時の自分に教えてあげたいですね。
「大丈夫だ!未来と科学を信じて30年待て!壊れたからって捨てるなよ!」
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コメント
昔はデジタルノギスで計っても、その設計通り出力してくれるものがなかったので、結局は手作業でしたからねぇ。本当にいい時代になったものです。なんせ今、弾性のあるプラスチックどころか、ゴム状の物まで光造形でできますからね。ボロボロになったキャタピラでも復活できます。さすがに基盤とかは、私の手には負えませんが、それでも壊れた玩具を直すのが楽しくてw
投稿: 腰原 仁志 | 2022/06/07 22:55
3Dプリンターまじ裏山杉。出力準備とかそう単純でないのも分かるけど。
手探り改造だとパーツ制作で接着剤があらぬところに…、なんてなっちゃうし、サイズ調整の再現性とかも。
バーツ紛失、破損は玩具あるあるなんで同人誌の二次創作みたいなグレーな領域で商売に出来そう。
アップデートパーツでそういうのすでにあるみたいたけど。
投稿: ズッツトン | 2022/06/07 11:29
本当に3Dプリンタ様々ですね。
どうしても壊れやすい部品とかありますし、本当いい時代になったものです。
投稿: ぱ | 2022/06/05 16:22