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2020/10/03

水に溶けるプリンタ

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別にプリンタ本体が水に溶けるわけではありません。今回は、3Dプリンタのマテリアル使用備忘録みたいなものです。

先日から3Dプリンタで大物を作成していましたが、その際に別のマテリアルを試してみました。光造形に違いはないのですが、水溶性のUVレジンです。

一般的な、アルコール洗浄が必要なUVレジンと異なり、その名の通り水に溶けます。もちろんちゃんと乾燥させれば、固まったままです。水溶性のプラモ塗料と似たような感じですね。

 

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利点としては

・印刷後は水洗いだけで済むので、取り扱いが圧倒的に簡単

・無水アルコールを買わなくていい

・プラットフォームやレジンタンク、攪拌用のヘラや刷毛も、水で洗い流すだけでいいので、お手入れが超簡単

 

反面、

・アルコールタイプと比べ、少し値段が高い

・色はそろっているが、疑似ABSや軟質樹脂などのものはまだない(あるのかもしれないがそこらじゃ買えない)

・水溶性なので、完全硬化前にあまり長い間水につけておくと、瓦解してくる

・露光に少し時間がかかるので、スライサーソフト上の印刷設定をいじる必要がある

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↑ こちらが標準的なUVレジンの硬化時間設定ですが

 

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↑ 水溶性レジンの場合は、露光時間を少し長めに設定する必要があります。またその分、印刷時間も伸びます。

 

そして

・洗浄後の水は、そこらに安易に流して捨ててはいけない

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この水を少し日光にさらした後、タライの底をひっかいてみると、がりがりと硬化したレジンが削れるのがわかります。なんせUVレジンが溶け込んだ水ですので。その水を濾紙でこしてみると、こんなものが底に残ります。もしそのまま下水道にでも流した日には、目も当てられません。ちゃんとろ過して、不要なレジンを分別した後、水を捨てる必要があります。

しかしそれらのデメリットを差し引いても、洗浄と印刷後の手入れが楽なのは、大きなポイントです。これからは特殊素材を使わざるを得ないとき以外、水溶性レジンにしようと思います。

 

また水溶性云々以外に、UVレジンでの造形の際の注意ポイントもわかってきました。

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・造形の際、「中空」を作るのは避けた方がいい

3Dソフト、またはプリントのためのスライサーソフトでの設計の際、物体を中までみっちりと材質が詰まった状態でなく、中空で設計することがあります。しかしこれは、FDM式のフィラメントを熱で溶かす造形でなら有効ですが、光造形で液体UVレジンを使用する場合には、ひどい目にあうことが多いです。

私も最初、大した意味もなく「中空で設計した方が、材料を節約できていいだろう」と思って、スライサーソフトにそのように自動設計させました。すると、出来上がったもの(ちょっと大きめの箱型)は、乾燥させた数日後に割れてしまいました。これは、中に空気を閉じ込めたまま現物を生成してしまうので、時間が経つと圧力かなんかで破綻をきたすのだと思われます。ちょっと考えてみりゃ当たり前なんですが!

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それを防ぐためか、多くのスライサーソフトには「穴を空ける」というコマンドが用意されています。ああ、これで中の空気を逃がす穴を空ければいいのか、と思って成形させてみたところ。

今度は、中空部分に残っていた、乾燥していない液体状のUVレジンが、その開けた穴から漏れ出すという大惨事が発生しました。せっかく完成したほかの部品が、漏れ出たレジンでびしゃびしゃです。なんてこったいオリーブ!

 

というわけで個人的には

・UVレジンで大きな部品を作成する際は、できるだけ中空生成は避け、ムクの状態で印刷させる

・どうしても中空部分が必要な場合は、「ガワ」を作って後で組み合わせる

のがいいと思います。つまり

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↑ こういうものを作る際に、重くなりすぎるようだったら

2

↑ こうではなくて

3

↑ こうか、もしくは

 

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↑ こうした方がいいんじゃないか、ということです。なお私もトーシローですので、何か間違っているようでしたらご指摘ください。


また多くの光造形プリンタの「モデル自体は、下から上に印刷する」仕様上(実際には上下反転し、つららのように上から垂れ下がって生成されるのですが)、設計の際にはモデルの下が重い方が、印刷が安定します。上の方が重い(大きい)と、やってできなくはないですが、部分的に途中で取れちゃったり、意図しない印刷結果を招くことがあります。

ですので、先ほどの分割印刷の場合には

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↑ こう置いた方がいいことになります。

 

ただ、一般的にスライサーソフトは、印刷の際にサポート材(印刷後にモデルを取り外しやすくするための余剰パーツ)を推奨してきます。だいたいこんな感じで。

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赤い部分がサポート材です。プラットフォームとモデルの間を取り持つので、これが少なかったりすると、その上の面がうまく成形されない場合があります。多すぎても取り外しに困るんですが。

しかしこのサポート材は、直接モデルに接するため、最後に切り離す際、どうしてもサポート材と接したモデルの面に凸凹が発生します。光造形3Dプリンタの印刷は、まさに科学の結晶ですので、印刷面は非常にきれいでなめらか、それこそ0.01mm単位で細部を出せます。しかしこのサポート材と接した面のみ、印刷後に自力で綺麗にする必要があります。まぁあれだ、プラモのバリ取りだ。
それは結構めんどくさい、というかせっかくの美しい造形の恩恵を受けられないので、サポート材と接する面をどこにするかは、設計の段階で考えておく必要があります。

上記のモデルで、もし「上下の広い面を、できるだけ綺麗に出力したい」場合には、こういう配置にすることがあります。


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↑ こうすることで、サポート材と接する面が最小限で済み、大きな面を綺麗に出力することができます。左側のモデルのサポート材が、下の面から天辺の面まで伸びているのは、おそらくこれがないと上の面が落っこちてしまうからです。

ただこれも、最良の方法というわけではありません。今度は時間が関係してきます。というのも、光造形プリンタの成形時間というのは、モデルの「広さ」でなく、「高さ」に大きく影響を受けます。成形時間は、プラットフォームが、LED光源とレジンタンクとの間を行ったり来たりする時間、つまりそのモデルの「高さ」に比例すると言っても問題ないでしょう。

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↑ 高さが4㎝程度だと、印刷時間は2時間くらいなのですが(当社比)

 

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↑ 高さが12㎝くらいになると、印刷時間が7時間近くになります。結果的には同じものを作るにしても、置く向きで出来栄えも時間も大きく変わってしまうわけです。7時間かけて失敗品を作った時のショックはでかいよ?


さらに厳密にいうと、下から薄い層を生成していく成型方法のため、生成物の割れやすい方向が決まります。

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↑ 雑なイメージですがだいたいこういう感じで「下から順に」積層されていきますので、最終的な見た目は同じ形であっても

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どちらがどういう向きに割れやすいのかは、想像がつきますね。完全に乾燥してしまえばそれほど差異はないような感じもするのですが、力のかかる部品を作る際には一考した方がいいかもしれません。

 

マジでこういう話、どっかひとまとめに書いてないと、わかんねーって。こんなトライ&エラー物件・・・。面白いんですがね・・・。

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