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2020/07/12

明日のプリンタ

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ついにやってしまった・・・


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TOYNAMI・MasterPiece、VOLTRON。今から20年くらいのアメリカの玩具ですが、今回ほぼ全部記事に関係ありません。たまたま倉庫を整理していたら出てきただけです。
懐かしくて合体させていたら、妙に左腕・・・グリーンライオンの合体部がユルユルなことに気づきました。ポーズを付けてもすぐに、だらんと腕が下がってしまいます。


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そこでグリーンライオンを分解してみると・・・。


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合体用のジョイントである、胴体下部の部品の回転軸が、経年劣化によって割れてしまっています。まぁ昔の玩具だしね。

強固な接着剤で修理を試してみたいところですが、経験則から、そういった修理では根本が解決しないことも知っています。力がかかる部分は、一度割れると修繕が難しいんですよね。それもあって。


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とうとううちに来た!
噂の未来アイテム、3Dプリンターを発注してしまいました。いや古くからのダチ、渡辺さんの記事やTwitterを見てずっと気になってたんですよ。それで今回も相談し、とうとう決断してしまいました。(ありがとうございます)

3Dプリンタには大きく分けて、FDM形式という熱でフィラメントを溶かすタイプと、光造形というUVレジンを固めるタイプがあります(渡辺さん受け売り)。
私が購入したのは、ELEGOOという会社の「MARS PRO 3D PRINTER」という、光造形タイプのものです。お値段は「ちょっといい超合金魂」程度だったので、買ってしまえ!と決断したのですが・・・甘かった(後述

今回の光造形にまず必要なものは

・本体(USBメモリや工具などが同梱されていました)

・UVレジン(今回は一般的なタイプを使いました)

・マスク

・手袋

などです。実はやればやるほど、「ああっこれがいるじゃん!」と気が付くものが多いのですが・・・。

まずはマニュアルを読みますが、全部英語です!わかったようなわからないような!
そして結構アバウトです!必要なサプライ品すら書いてありません!
おまけに、説明書に書いてないボタンとか平気で存在しています!「Tank Clean」って意味は分かるけど、いつ押すんだ?いや押していいのかコレ?

などと疑問符ばかりですが、恐る恐るやるだけやってみます。


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操作はタッチスクリーン、進行状況も確認できます。電源などを接続したら、まず「SET Z=0(ゼロ調整)」をします。これは積層させる印刷面であるPlatFormという部分と、光造形の根本であるLEDガラスとの、高さ調整です(たぶん)。
これがきちんとできていないと、ひどい目に遭います(何度も遭った)。説明書には「PlatFormと本体の間にA4の紙を置いて、ギリギリ引き抜けるか抜けないかくらいの間隔にしろ」みたいなことが書いてあります。ええっ微妙すぎねぇ?

なんか他の機種だと、このゼロ調整を自動的にやってくれる物もあるらしいのですが、MARSPROは手動なので仕方ありません。出来る限り頑張ってみます。

本体前面はUSBスロットがあり、そこにUSBメモリなどを差し込むことで、本体に印刷データを提供します。基本的に、PCと接続したりはしません。


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プリントを開始すると、上部のBuild Platformと呼ばれる部分がゆっくり降りてきて、レジンの海の中に平らな部分を突っ込み始めます。動作音は非常に静かで、小型扇風機程度の音しかしません。
光造形の仕組みは、本体の下からLEDが発光し、UVレジンを固めて、PlatFormの「下に」、積層的に立体を形成していくということのようです。つららとか、鍾乳石とかと同じ感じですかね。

サンプルデータを「印刷」させてみてから3時間半、モニターに「完成」の文字が出ました。さてどうなったのかな!


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あれ?なんじゃこりゃ。まさかこれがサンプルじゃないよね?

どうも、先ほどのゼロ調整を失敗したようです。ちょっときつめに(紙が抜けないくらいに間隔を狭く)したので、印刷物がPlatFormにではなく、RezinTankの底にくっついてしまったのですね。しょうがない、ゼロ調整からやり直しです。

調整のし直しや、再度の印刷の際にはいったん、PlatFormやRezinTankをすべて綺麗に無水アルコールで洗い、出直す必要があります。・・・って無水アルコール?そんなもの同梱されてないぞ!
ああ、それでAmazonでコレ買った時に「同じ商品を買われた方は、一緒にこちらも購入しています」って、アルコールが推奨されていたのか!説明書より、Amazonのおすすめの方が納得できるって、どういうこっちゃ!
しょうがないので取り敢えず今回は、カメラレンズを拭くアルコールで代用しました。無水アルコールを買わねば・・・。

そしてゼロ調整をやり直すためには、RezinTankも空にしないといけないのですが、そのためにはいったんレジンを瓶に戻す必要があります。一度使ったレジンには、印刷時のゴミが混ざっている可能性があるため、濾紙を通して再利用しなければなりません。
ああ!それでAmazonでコレ買った時に(以下略
漏斗と濾紙も買わねば・・・。

そしてゼロ調整を緩めにして始めたら、今度は本体がガンワガンワ言い出して動きません。今度は緩すぎたようです。ウキー!

ってなことを数回繰り返した後、ようやくちょうどいいゼロ調整ができたようです。一度固定すれば、ある程度はもう調整しなくていいらしいのだけが救い・・・。

追記:「ある程度は調整しなくていい」のは間違いでした!起動するたびに毎回、いや、プリントするたびにし直した方がいいです、コイツの場合。まあ大した手間じゃないけどさ・・・。

待つこと3時間半後・・・。


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ああ!やっと何かできてる!ほんとにつららみたいだ!

印刷物は、PlatFormに直接くっついているので、付属のへらで剥がし、アルコールをぶっかけてごしごし洗い、余分なレジンを落とします。この時もマスクをしていないと、レジンって結構あちこちに飛ぶので、顔や手に(見えなくても)残っています。ぬめりが取れるまで洗いますが、UVレジンである以上、最後に日光浴させてレジンのぬめりを取るのが確実ですかね。

それはともかく・・・。
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苦闘半日、チェスで使うルークのコマが完成しました!


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ええっ何これ凄い・・・

造形の細やかさもさることながら、各部のエッジがきっちり立っており、モールドがはっきりしています。普通に金型に溶けた材料を流し込むことでは難しいような、内部の空間の表現もちゃんとできています。ってか、人間がこの形状を人力で削りだすのって無理だよね?

表面も非常になめらかで、積層のあとは全くわかりません。よーく目を凝らすと、木目のような模様も見えますが、このまま何も表面処理しなくても、全く問題ないレベルです。


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今回出力してみたものは大きさ約4.5cm、ダイアクロン隊員のパワードスーツと比べるとこのくらいです。いや参ったなコレ、ほんと凄いわ。人類の科学の叡智の結晶だ!(そんな
悪戦苦闘の苦労が、全て吹っ飛びました。

さて!

印刷方法は理解した、では今度は自分で何か作るにはどうしたらいいか、の方です。
さっそく、さっきのグリーンライオンの合体部品を作りましょう。


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まず、デジタルノギスで各部の正確な数字を計算します。


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続いて元の部品を撮影、分かりやすいように数値を記入します。


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これをLightWaveに取り込んで、モデリングをします。撮影はともかく、モデリングは私たちの最も得意とするところなので、データ自体は5分もしないで完成、STLファイル形式で出力します。大きさも、各部の比率さえ合っていればこの後調整できますので、今は気にしません。


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出力したSTLファイルを用いてさらに、3Dプリンタ専用のスライスソフトで、印刷用のファイルを作ります。この時に0.1mm単位で大きさを変えられます。

3Dプリンタデータの特性として、「サポート材」と呼ばれる本体以外のデータを作る必要があります。積層の段階で、モデルの下から上へ積んでいく仕様のため、形のバランスが変なものは予期しない結果を招くことがあります。それを防ぎ、またPlatFormから取り除きやすくするための「余計な(でも必要な)パーツ」ですね。まぁプラモのランナーみたいなもんだ。


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実際に、サポート材込みでプリントしてみた例がこちら。もはや、どれがサポート材なのかすら分からないくらいですが。


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こちらが完成品。印刷の際に横に伸ばした杖を支えるためには、あのくらいサポート材が必要だということです。

MARSPROでは、付属ソフトで自動的にサポート材を計算してくれるので、サポート材の配置や形状を考える必要はありません。しかし積層方式の都合上、割れやすい方向などは決まっていますので、モデルをどういう方向に置くのがより効率的かは、最初に自分で検討しなければなりません。
こういう時は、プラモばっか作ってた経験が生きるね!

では自分で作成したデータを3Dプリンタに持って行って、印刷!


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できたー!ちゃんとデータ通り、テーパーも立ってるし、軸の穴も綺麗に開いています。これは小さいので、作成時間も15分程度でした。


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サポート材を切り離し、裏面を整えます。表は何もしなくても全く問題ないくらい、綺麗にツルピカです。


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グリーンライオンに取り付け、相棒のレッドライオンと比べてみたところ。全く遜色ありません。色はアレですが、今回はあくまでモデリングや材質のお試しですのでね。


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ゴライオン・・・もといVOLTRONに合体させてみたところ。きちんと組み合い、保持力もばっちりです。強度は心配だったのですが、動かしても全く問題なく、折れる気配もありません。

しかし今となっては、TOYNAMI版のってあんまりカッコ良くな(


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何度も合体させてみた後、ジョイントを見ると、少し削れて白くなった跡があります。これはモデリングやプリンタではなく、材質の問題ですね。通常のレジンだとどうしても削れて粉を噴きますので、これはやっぱ、ちょっと高くて硬いやつ・・・ABS類似レジンという物を試す必要がありそうです。いかん、また買うもの増えた。
って結局、「ちょっといい超合金魂」どころか、「DX超合金魂」くらいお金かかってないか!

しかし「じゃあ、このジョイントを薄い2枚組にして、間に0.5mm鉄板を挟むのもどうか」とか考えること、そしてそれを試すこと自体が楽しくなってしまって、今さら後には引けないぞ!だから征くのだ玩具道!

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いや、科学の進化はすさまじいですね。
大変失礼ながら今まで、安価な3Dプリンタというのは「キン消しみたいなものを作れる」程度かと思っていましたが、とんでもねぇ!これ、市販のガシャポンだと言われても信じちゃうよ。まぁすでに「安価」の枠を踏み外してるが・・・。

でも(モデリングさえできれば)ほぼ何でも作れるということは、分解できれば、どんな玩具でもだいたい修理できちゃうってことでもあります。モデリングなんか、私たちは三度の飯より好きですしね。
まぁ材質は考えねばなりませんが、軸の砕けたザンボエースも、片翼紛失したレギオスゼータも、ちゃんと直してやれる気がしてきました。

そしてそれどころか、この世に存在していない玩具も作れるじゃん!いつか本当に、「完全変形ヴィルゼノン」を作らねばなるまい!

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コメント

サイズとしては、それこそ0.1mm単位で作成できます。また記事を書こうと思いますが、PGガンダムのフル可動手首みたいなものなら作れました。ちょっと凄いよコレ。

ただ、問題は材質ですね。光造形のレジンだと、すごく細かい部品が作れて仕上がりも綺麗なのですが、強度という点ではやはり不安があります。やっぱレジンですのでね。ガンプラの装甲を作るのなら全く問題ありませんが、フレームを作るとなると心配、という感じでしょうか。

このゴライオンも、さすがに金属製の両腕を細い部品1個で動かすのは不安過ぎるので、この後、補強針金を併用したハイブリッド部品(カッコよく聞こえる)を作成しました。

3Dプリンタにはもう1種、FDM形式がありますが、そちらはプラやABSを熱で溶かして成型するため、かなり強度のあるものも作れるそうですが、仕上がりの美しさという点では、光造形に分がある(という受け売り)です。

作っていて楽しいのは保証しますが、なんせすべて手探りというか、トライ&エラーが必須なので、万人にお勧めしがたいところがまたトホホ。いや凄く面白いんですがね・・・。

投稿: 腰原仁志 | 2020/07/26 02:58

おぉぉ…素晴らしい。

サイズ的にはどこまで小さい物ができるのでしょうか?フリマで探してきたガブティラのジョイント部分の内蔵パーツを作りたいなぁと思いつつ買おうかどうしようかとパソコンとにらめっこしてるのですが…ブログ読んでると挑戦してみたくなるなぁ。

投稿: うにまる | 2020/07/21 23:11

何でもこのプリンタ(というか光造形系のやつ)を買った人の8割は、付属のサンプルデータ印刷したらほぼ満足でお蔵入りだそうです。確かに理由はわかります。「何か必要なものを作りたい」という意思がないと、それ以上は踏み出さないですね・・・。私はこんな至上の玩具はないと思うのですが。フレがいるのは恵まれていますね。

ただもうちょっと扱いが楽になって、一般的にデータが出回るようになれば、これもご家庭に1台…は無理にしても10件のご家庭に一台…くらいは普及するかもしれません。著作権の問題もあるし、そう簡単には行かないかもしれませんが、意外とあと数年後かもしれません。

私のデータだって「TOYNAMIのVOLTRONの補修パーツ」というと配布に問題がありそうですが、「緑色の獣のよく壊れるアレ」と言ってどっかに置いとく分には…やっぱマズいか。そういうのもメーカーが正式に許可を出してくれれば、3Dプリンタももっと裾野が広がるかも。

投稿: 腰原仁志 | 2020/07/17 05:09

つまり、オリジナルのダイヤブロックが!

投稿: 黒竜王V | 2020/07/14 02:24

凄いです、玩具ちょっとでもいじったことある人には憧れという天上の道具というか、とにかく凄い。
自分も以前「週刊3Dプリンタを作ろう」だったかな?そんなのあって買ってみたかったけど、まだまだ一般に浸透してるとはいいがたい分野だし、何年後かの完成時には5世代位古くなるんじゃ?と思って手出しませんでした。データ造形出来て、知り合いが使ってるとか最高の環境。新しい事は使った事ある人が知人にいるだけでどれだけ心強いか。
破損パーツ作りができるって、素材さえクリア出来たらこんなうれしい修理は無いです。それが無いとなると穴をちょっとドリルで広げて接着してプランプランでとりあえずくっついてる程度しか直せない。
だいたい直そうとしてより酷い事になってガラクタになるんだけど。
憧れの道具だけど一生触る事も無い道具なんだろうなぁ~。

投稿: ズッツトン | 2020/07/12 20:46

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